2015年03月31日

未払い残業代のツケを支払う者

国会議員が、かつての秘書から700万円にも上る未払い残業代請求を受け「払わない」と発言し大きな物議を醸しだしていますが、過度な長時間労働に対するリスクや未払い残業代請求に関するリスクは、今後も広がり続けていくことは間違いありません。

労働時間管理・賃金管理を適正に行わないことで、多額な簿外債務(未払い残業代などは、帳簿に記載されていない債務という考え方)を長年にわたり放置していくことは、大きなリスクへとつながっていきます。

労働時間管理制度の構築や賃金管理制度の変更により、ある程度の残業時間や残業代をコントロールすることはできますが、実際に発生した残業を無くすことができるわけではありません。

そのため自社にあった労働時間管理と賃金管理制度の構築を進めていくと同時に、残業が常態的に行われるような人事・労務管理環境を変えていくことが必要になります。

それには「意識の改革」が最も重要だと考えています。

たとえばノー残業デーを設定し適正に運用することや「長時間労働=高評価」といった誤った人事評価制度の改革などの「物理的な改革」を行うことも重要ですが、人事・労務管理は感情の生き物であるヒトが行うことですので「長時間労働(残業)は良いこと」とする意識を変えていく改革が避けて通れません。

ある調査では「労働時間が伸びている(残業が増えている)社員の役職昇進率が上がる」というデータがでています。

優秀な社員に仕事が集中した結果として、その優秀な社員の残業が増えているというケースもありますが、大多数のケースで「長時間会社に残って仕事をしている=頑張っている」という感覚を捨てきれない人がまだまだ多くいることの表れです。

内閣府が発表しているワーク・ライフ・バランスに関する意識調査において「残業している人に対してどのようなイメージを持っていますか」という設問では、1日の労働時間が10時間未満の社員に対して「頑張っている人」と回答した割合が38%であるのに対し、12時間以上の社員に対しては53%が頑張っている人と回答していて、労働時間が長くなるほど割合が高くなっています。

さらに同じ設問で「責任感が強い」と回答した割合をみると、1日の労働時間が10時間未満の社員に対しては30%ですが、12時間以上の社員に対して責任感が強いと回答した割合は39%となっており、こちらも労働時間が長くなるほど責任感が強いと感じている人が多いことがデータでも明らかにされています。

このような意識のままでは、残業を減らし質の高い仕事で利益を生み出すという感覚が生み出されることは難しいでしょう。

慢性的な長時間労働は、会社にとっても大きなリスクを負っていきます。過度な長時間労働が続いたことにより脳や心臓疾患・精神疾患などの症状が出た場合において、その症状が労働災害と認定されれば、会社が安全配慮義務違反による損害賠償請求をされるリスクも高まります。

さらに退職後に未払い残業代の請求を行った元社員に対して残業代を支払うこととなった場合に、そのツケを払うのは「会社と会社に残っている社員達」であることを忘れてはなりません。

会社が次々とお金が溢れてくる打ち出の小槌を持っているわけではありませんから、退職した元社員に支払う過去の未払い残業代の出所は、ボーナスや昇給のために予算化していた人件費の中から工面せざるを得ないというケースも当然想定されるからです。

部下の労働時間をコントロールできないことは、長時間労働をする社員を高く評価していた上司自らのボーナスなどの額にも影響を与える可能性のある話なのだと理解すべきです。

そのためには「短時間で質の高い仕事をすることを評価する」「部下の残業時間を減らす取り組みを行った上司を評価する」といった人事評価制度の改革や「担当がいなくても他の社員が仕事を代替できる体制つくり」といった物理的な改革を進めるのと同時に、労働時間が長くなればなるほど「頑張っている・責任感が強い」といった労働した時間だけを見て評価するような誤ったイメージを変える「意識の改革」が避けて通れません。

残業をすることが当たり前となっている人事・労務管理環境を変えて、仕事をする時間の長さではなく仕事の質を高めるための労働時間管理の方向性は、リスクを減らすだけではなく中長期的に会社に大きな利益をもたらします。そのために経営トップの号令の基、労働時間管理に対する「物理的な改革」と「意識の改革」を進めていくべきだといえます。

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posted by マサ at 16:14| 社労士日記