2014年09月30日

人事評価制度における落とし穴

「あの上司に私を評価する資格があるとは思わない」「評価のやり方が納得できない」「納得のいかない評価をされて賃金に影響する事が理解できない」など、人事評価制度を導入した際によく聞こえてくる話です。

感情の生き物である「ヒト」が「ヒト」を評価するわけですから、100人いれば100通りの意見や評価が出てきてしまうこともあり、このような意見や不満が出てくることは不思議な事ではありません。

そのため各会社では、評価の基準を公表して透明性を高めたり、考課者(評価をする側の社員)複数によって一人を評価し、複数の目でなされた評価によって正当性を高めようとしたり、考課者の評価する能力にバラツキや誤差が生まれないように、考課者訓練(研修)を頻繁に開催するなどを行っています。

しかし「わが社の人事評価制度に100%満足しています!自分への評価結果にも大満足です!」といった声が聞こえてくることはありません。

これは、生活するうえで重要となる「賃金額」の決定要素(昇給額や賞与額)として人事評価制度で下された評価が活用されることが大多数であり、感情の生き物である「ヒト」が下した評価が自身の直接の生活に影響してしまうことへの根強い警戒感があるからといえます。

ヒトとは、往々にして自分に甘く他人に厳しい所があります。

人事評価制度で行われる「自己評価」(評価される側の社員が、自分で自分を評価する)の結果を見れば一目瞭然であり、自分で自分を評価した結果「自分に低評価」をつける人はいません。

たとえ自ら足りないところがあると自覚していたとしても、自ら低評価をつけるということによって、当然考課者の評価も低評価になるわけですから、賃金に影響のでる評価を少しでも上げたいと思えば、自ら低評価をつけるメリットはありません。

さらに、部下を管理する上司に求められるマネジメント能力と、現場で業務を遂行する仕事力とは別物であることを理解せずに「俺より仕事が出来ない上司に評価なんてされたくない。部下も上司を評価できるようにするべきだ」といった意見まで出てくる始末です。

逆に評価をする側である考課者の評価結果を見てみても、部下を評価する事に恐れ「無難な評価」(大きな差をつけない、マイナス評価を避けて中間評価のみ下すなど)しか下せない者や、明らかに「好き嫌いといった感情」が排除しきれていない評価など、考課者が行う評価としては問題のある評価結果も見受けられます。

このように曖昧さを完全に排除する事が難しい人事評価制度における評価が、日々の生活に直結する賃金に影響を及ぼすことへ警戒感を持つことには理解できます。

しかし、会社に貢献している社員に対して賃金的にもポジション的にも優遇していくために「なんとなくではなく、明確な基準によって決めていきたい。公平に賃金額等を決定していることを社員に示していきたい」と考えることは当然であり、それらの判断基準として人事評価制度を構築・運用していくことには意味があると考えています。

ただし、人事評価制度によって下された評価への信頼性が無ければ、逆に社員のモチベーションを下げてしまう結果になること、感情の生き物である「ヒト」が「ヒト」を評価することの難しさを十分理解しておかなければなりません。

つまり、人事評価制度によって下された評価を「賃金額決定の要素にどの程度使用するのか」(評価と賃金額決定のウエイト)については、慎重に検討すべき問題だといえます。

人事評価制度で下された評価から見えてくるのは、「仕事のできるAさん、仕事のできないBさん」といった単純な結果でしょうか。

「仕事の結果は出しているAさんだが、自己中心的で後輩への指導などは出来ていない」「仕事の結果はあまり出せていないBさんだが、気配り上手で職場のムードメーカとなっている」

人事評価制度で見えてくるのは、仕事が出来る・出来ないといったことだけではなく「その社員に足りない部分」が明確になることでもあります。

「人事評価制度=会社に貢献している社員へ多くの賃金を分配するための手段」という考え方だけで制度設計・運用することで、その人事評価制度がうまく機能するでしょうか。

感情の生き物である「ヒト」が織りなす人事・労務管理の世界における人事評価制度の導入にあたっては、賃金配分の部分と人材育成の部分をバランスよく設計すべきだと思います。

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posted by マサ at 19:08| 社労士日記