2015年02月27日

グローバル展開する企業において重要な社会保障協定

港区という土地柄もあると思いますが、弊事務所も外国人の人事・労務管理案件が年々増えてきています。

外国人の人事・労務管理においては、労働法関係だけではなく入管法などの知識も必要となってくるため多角的な視点を求められますが、今回のブログでは、その多角的な視点の一つである社会保障協定について簡単にふれてみようと思います。

グローバルな事業展開を行っている企業では、本社の社員を海外にある支店や現地法人企業等に派遣することは珍しいことではありません。

このような国をまたいで働くときに問題となる一つが社会保障制度(原則として年金関係、相手国によっては健康保険、雇用保険、労災も含まれる)の2重加入の問題です。

たとえば日本人Aさんが日本の会社との雇用契約がある状態で、その会社の海外支店に派遣された場合、原則日本の年金制度(厚生年金)に加入したまま海外にある支店に勤めることになります。

ところが、その派遣された国の年金制度にも加入が義務付けられることとなり、日本の年金と派遣された国の年金の両方に加入して保険料の支払いが必要となります。

そのため一部の国との間で「社会保障協定」と呼ばれる特別な協定が結ばれており、一定のルールに基づいて「片方の国の年金制度のみ加入すればよい」という取り扱いが行われています。

この一定のルールとは、簡単にいうと「5年を超えて働く方の国の年金制度に加入する」ということです。

たとえば日本人Aさんが日本の本社から米国にある支店に3年派遣される予定であれば、一定の手続きを行うことで、日本の厚生年金に加入し続け、米国の年金制度(ソーシャル・セキュリティー)の適用を免除されることになります。

逆に米国人Bさんが8年の予定で米国本社から日本法人に派遣された場合、一定の手続きを行うことで、米国の年金制度の適用が免除され、日本の厚生年金制度に加入することになります。

なお、入りたい方の年金制度に入るのではなく、原則として派遣期間の予定が5年以内か5年を超えるかによって加入する国の年金制度が決まってくることに注意が必要です。

また、この2重加入防止のための取扱いを受けるためには「適用証明書」(年金に加入していることを証明し、社会保障協定の取扱いに則って免除を認める文書)が必要となるので、日本の厚生年金に加入し続けるケースでは、日本年金機構に対して適用証明書の交付申請を行うことになります。

また、この社会保障協定には2重加入の防止だけではなく年金加入期間を通算する協定(イギリス・韓国は除く)も結ばれています。

簡単にいえば「日本と相手国で得た年金期間を通算することで、両方の年金を貰えるようにする」ということです。

ざっくりとした例ですが、8年間日本の厚生年金に加入した米国人Bさんは、現行25年の受給要件を求められている日本の老齢年金を貰うための期間が足りません。

しかし社会保障協定による年金期間の通算により、米国年金制度の期間が17年間あれば、両国の年金期間を通算して25年となるため、実際に支払った8年分の日本の老齢年金を将来受け取ることができるようになるわけです。

一方の日本人Aさん(米国年金3年加入)の場合も同様に、米国老齢年金を受給できる要件である10年(40クレジット)に足りませんが、日本の年金加入期間が7年分あれば通算して10年となり、3年分の米国年金を受給できることになります。

現在日本と社会保障協定の署名が済んでいる国は18か国(協定発効済み国:ドイツ・イギリス・韓国・アメリカ・ベルギー・フランス・カナダ・オーストラリア ・オランダ・チェコ・スペイン・アイルランド・ブラジル・スイス・ハンガリー 署名済みだが未発効の国:イタリア・インド・ルクセンブルク)あります。

しかし国によって協定内容が違うため、社員を海外に派遣する・海外から外国籍社員の派遣を受け入れるといったグローバルに展開する企業には、その相手国の社会保障内容や日本との間で結ばれている社会保障協定の内容などを確認したうえで、どのような取り扱いにすべきなのかといった多角的な視点での人事・労務管理が求められることになります。

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posted by マサ at 19:41| 社労士日記