2014年04月30日

高い解雇ハードルへの議論の必要性


映画やドラマなどで「お前などクビだ!クビ!」と叫ぶシーンがありますが、実際の人事・労務管理の現場では、頻繁に目にするようなシーンではありません。

日本企業にとって、「クビ=解雇」を通知することは、非常にハードルの高い行為という認識があります。

労働契約法において、「客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、解雇は無効」とあるように、長い期間をかけて積み上げてきた判例によって構築された解雇権濫用法理が人事・労務管理の現場に大きく影響してきているといえます。

ただし「解雇をしてはいけない」ということではありませんから、就業規則の規定や解雇に至った経緯などを総合判断して解雇せざるを得ないケースがあるのも事実です。

あまりにも「解雇はハードルが高い」というイメージが大きくなりすぎた結果、会社から解雇を通知することはしないが、本人が会社を辞めたくなるように仕向けるような行為(肩たたき)を長年行うような行為もあり、このような方法が正解だとは思えません。

会社を辞めさせるために肩たたきをするぐらいであれば、解雇したほうが良いというような安易な理論に行きつくことはありませんが、少なくとも「解雇のハードルを高くしていくこと」が問題解決することに繋がらないことは確かだと思います。

数年前のことですが、駅の構内で「会社に行きたくない・・行きたくない・・」と繰り返し独り言をいう40代と思われる背広姿の男性を見たことがあります。

この男性がどのような状況におかれているのか不明ですが、少なくとも会社に行くことだけで苦痛になっていて、かつ、事情があって会社を辞めることができない四面楚歌に追い込まれていることは想像できます。

そのような中、近年議論が活発化しているのが「解雇の金銭解決制度の導入」です。

解雇規制における金銭解決制度とは、裁判所が解雇を違法と判断した時に、労働契約の終了(退職)を前提として金銭の支払いを会社側に命ずる制度とされています。

ここでポイントとなるのが、解雇を違法と判断された場合である事と、退職を前提としている点です。

解雇を通知された労働者が解雇無効を主張して裁判に持ち込み、裁判所が解雇を違法と判断した場合、解雇された労働者の原職復帰(職場復帰)が認められることになるのですが、解雇問題で争った会社に戻って将来に向かって仕事をしていくことが事実上難しいケースが大多数であり、現状でも退職を前提とした金銭解決(和解金の支払い)が図られています。

さらに訴訟だけではなく、会社と労働者の間でおきている労働トラブルを解決するために設けられている「労働審判制度」や「あっせん」等の制度でも、退職を前提とした金銭の支払いを行うことで解決に至るケースが大多数です。

このような事情があることから、解雇の金銭解決制度の導入論があるわけですが、当然問題点も多くあります。

お金さえ払えばいつでも解雇できると考える会社も出てくる可能性もありますし、整理解雇などのように対象人数の多い解雇事案の場合、解雇を違法とされた場合のリスクは、今以上に高まると言えます。

また、解雇の金銭解決における金額が「いくらなら妥当なのか」といったことも難しい問題です。

「会社を辞めてもらう」という行為の代償が大きいのは、どのような制度が出来ても大きく変わることはないと思います。

しかし、労働契約法でいう「客観的に合理的な理由」「社会通念上相当」という非常に曖昧な表現で「解雇が正当なのか不当なのかについては、裁判所の判断次第」といったことでは、人事・労務管理の現場に混乱をもたらすだけです。

解雇のハードルを下げることは、それぞれが置かれている立場(経営者側なのか労働者側なのか)によって賛否両論あるわけですが、金銭解決制度導入論を始めとして、今後議論をしていかなければならない問題です。

人材の流動化が進む日本の人事・労務管理の世界では、避けて通れない議論となるはずです。


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posted by マサ at 18:30| 社労士日記