2015年09月30日

多様な働き方と公平性

感情の生き物であるヒトの集合体である会社における人事・労務管理の世界では、公平性の確保が最も重要な要素です。

同じ事案でありながらAさんとBさんで取り扱いを変えるということでは、労使の信頼関係を維持する事もできず、社内の人間関係にも亀裂を生みだしてしまいます。

ところが感情の生き物であるヒトは、時に他人がどう感じるかといったことに考えを向けることをせずに、自らにとって最も都合の良い状態とならないことに不満を感じるケースがあるのが現実です。

家庭内などの小さなコミュニティーの中であれば多少のゴリ押しも通用しますが、感情の生き物であるヒトの集合体である会社の人事・労務管理の世界では通用しません。

これはサッカーという厳密なルールの下に競われる世界で、ゴールキーパーでもないのに「私だけ手を使ってプレーさせてほしい」といっているようなものです。

そのようなことでサッカーとしての競技が成り立たないのと同様に、会社の人事・労務管理の現場でも「マイルールが通用する」ということはありえません。

ところが、このような人事・労務管理上の問題は、会社の規模や業種に関係なく全ての会社で起こりうるものであるため、初めてこのようなケースに遭遇した時に「面倒だから認めてしまった」という状況を目にすることがあります。

これは、声高に不満をぶつければ「なんとかなる」と思わせてしまう行為であり、今後も同じようなことが繰り返される恐れのある由々しき問題です。

「なぜあの人だけ・・・」という新たな不満の声が周りからあがるのは時間の問題でしょう。

あちらを立てればこちらが立たずといった状況は、感情の生き物であるヒトを扱う人事・労務管理の世界では当たり前のように繰り広げられるものですから、常に全社員の公平性が担保できるのか否かといった視点で物事を判断していくしかありません。

そのため事案による判断となりますが、不満をぶつけてきている問題が全社員の公平性を担保できないのであれば、「全ての社員を同様のルールに則って取り扱わなければ、会社の人事・労務管理をするうえで公平性が保てない」といった当たり前のことを丁寧に説明しなければならない場面が少なからずでてくるわけです

私が社会保険労務士として様々な人事・労務管理の現場で見て・聞いて・説明し・説得するなかで、このようなケースの際には「公平性を確保するための判断だ」ということを何度も直接語りかけています。

渋々ながらも納得してくれる人もいれば、全く聞く耳を持たない人もいるわけですが、職場の公平性を確保できるような方向性に持っていくために根気よく話していくしかありません。

個々人が抱える個人的な事情が色々あることは重々理解できますが、会社の人事・労務管理上の話では、その個人の事情を一つ一つ汲みあげることはできません。

近年、多様な働き方を提言する声が多く聞かれますが、ここでいう多様な働き方が目指すところも「マイルールで仕事ができる」ということでは決してありません。

あくまで通常勤務をしている他社員と公平性が確保できることが前提でなければ、多様な働き方という曖昧なネーミングだけが独り歩きしてしまいます。

多様な働き方をする社員を通常勤務の他の社員が支えあうといったものではありませんから、多様な働き方を選択するうえでは「権利を主張するだけでは、周りの理解を得られない」ということを自らが認識する必要があります。

会社の人事・労務管理の現場は、100人いれば100通りの考え、ものの捉え方をする人がいるわけですから、個人的な主張をしたいときは一呼吸おいて俯瞰で周りを見てください。

個人的な主張だけをいってくるヒトがいたら、そのことを面倒だと感じずに公平性の観点から丁寧に説明をしてあげてください。

誰かの犠牲のもとに成り立つような多様な働き方であってはならないと思います。

だからこそ、感情の生き物であるヒトの集合体である会社における人事・労務管理の世界では、公平性の確保が最も重要な要素となるわけです。

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2015年08月31日

人材採用戦略における口コミの影響

近年、積極的な人材採用戦略にのりだす会社も増えてきましたが、新規採用のために募集をかけてもエントリーが一切ない、もしくは、非常に少ないなどの悩みが出てくることがあります。

募集すれば次々にエントリーがあるといった時代は今や昔といった感じですが、そのような中でも良い人材を獲得するために各社知恵を絞りながら人材採用戦略を進めているのが現状です。

あのユニクロを展開するファーストリテイリングが転勤のない地域正社員1万人を対象に「週休3日制度」を導入すると発表し話題になっています。

ファーストリテイリングが発表した週休3日制度とは、週休2日制から単純に1日休日を増やすというものではなく、本人が希望すれば1週間の内4日間は1日8時間から10時間に労働時間を延ばす代わりに、休日として3日確保するといったことで、休日で減った労働時間を他の日に振り替えるといったイメージです。

「働き方の選択肢を増やすことで人材確保につなげたい」といった考え方から生まれているわけですが、私が社会保険労務士として様々な会社の内情を見ている中で「給料よりも休みが多く欲しい」という労働者側のニーズを感じているのも確かです。

厚生労働省発表の平成26年就労条件総合調査結果を見てみると、年次有給休暇の取得率が平均で48.8%となっており、直近5年のデータを見ても50%を超えたことがありません。

年次有給休暇を取得しにくい職場環境がある、年次有給休暇を取得できる環境にあるが忙しくて休めないといった現場の声がある一方、退職時に残っている年次有給休暇を全て取得して辞めるということも近年では珍しいことではないため、年次有給休暇の残日数も労務管理上無視できない状況となっています。

そのような人事・労務環境の中では「休みやすさ」「長時間労働が少ない」といったキーワードは人材採用戦略において重要な位置にあるといえます。

近年の傾向としては、エントリーしたいと考えている会社が「働きやすい会社なのかどうか、給与水準はどの程度なのか」といったことを求職者が事前に調べているケースが大多数です。

インターネットがこれだけ発達した世界では、会社の人事・労務管理情報が簡単に収集されインターネット上の「口コミサイト」で検索できる時代となっています。

あるサイトでは、会社の給与水準や残業の有無、休日数、年次有給休暇の取りやすさといった人事・労務管理情報だけではなく、社内の雰囲気、経営者がどのような人なのかといった情報までが「口コミ」という形で掲載されています。

内容を見る限り、過去に勤めていた退職者が口コミを投稿したものだと憶測できるわけですが、プラスの口コミ内容ならまだしもマイナスの口コミ情報であれば、当然採用戦略においてプラスに働くことはありません。

新規採用のために募集をかけているのに「なぜかエントリーがない」といった状況にある場合、求職者を対象とした会社情報口コミサイトに「悪評」が書き込まれていて、その情報が多くの人の目に触れている可能性もあります。

どのような情報であれ、会社の秘密情報がインターネット上に掲載されてよいわけではありませんので、当然就業規則に「在職中のみならず退職後も会社の秘密情報を第三者に漏洩してはならない」などと規定し、入社時に「会社の秘密事項を漏洩させないこと」と記載された誓約書に押印を求めるといった対策を講じています。

しかし会社の口コミサイトには、様々な会社情報が掲載されているのが実態であり、会社情報口コミサイトに会社の情報が投稿されることを完全に止めることは難しいのが現状です。

感情の生き物である「ヒト」が織りなす人事・労務管理の世界では、物事一つとっても100人いれば100通りの感じ方、受け取り方をするものですから、口コミサイトに書き込まれた内容も一つの受け取り方にすぎません。

ところがサイトを見た求職者は、その情報も「会社を選ぶうえでの重要な情報」と捉え「参考」にしていることは間違いありません。

インターネット・SNSといった情報社会を迎えた今、会社の人事・労務管理の実態はガラス張り状態だといっても言い過ぎではないでしょう。

だからこそ人事・労務管理の分野に気を配ることは、会社の人材採用戦略において重要であり、会社の成長戦略にも影響を及ぼす重要な分野であることを認識していくことが必要だといえます。

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2015年07月31日

職場における居心地の良さの重要性

何故その会社に勤め続けるのか、何故その会社を辞めようと思ったのか、感情の生き物であるヒトが判断する事ですから100人いれば100通りの理由があります。

給料が安いから、休みが取れないから、残業が多いから等、その会社を辞めようと考える理由は様々ですが、私が様々な会社を見ている中で一般的に見て給与水準が高いと思う会社であっても、退職を希望する社員は当然出てきます。

逆に残業が多い労働環境でありながら、退職希望者がほとんど出ない会社などもあり「退職者を出さないために、どのような労務管理が適切なのか」という問いの答えは、簡単に答えを導き出せるようなものではありません。

給与を多く与えれば退職者が出ないという事もありませんし、有給休暇を取得しやすいなどの労務環境を改善すれば退職者が出ないという事でもありません。

私が様々な会社の人事・労務環境を見てきた中で、比較的退職者が出にくい会社の特徴を探ってみると、非常にあいまいな表現ながら一つの可能性が見えてきています。

その可能性とは「会社の居心地の良さ」です。

その居心地の良さとは、給与水準が高い、福利厚生が充実している、休日が多いといった物理的な要因ではなく、同僚や上司などの人間関係の居心地の良さを意味します。

私は社会に出てから勤めた会社は1社のみで、その会社に13年勤めた後に社会保険労務士事務所を開業しました。

会社員として勤めている中で、当然ながら色々な不満もあったわけですが、その会社に勤め続けた理由を考えてみれば人間関係の居心地の良さであったと思います。

当然、感情の生き物であるヒトである以上、どのような状況を居心地が良いと感じるかも多種多様と言えますが、会社における居心地の良さを感じる要因の多くは、職場における人間関係に起因すると言っても間違いはないでしょう。

逆にいえば社内の人間関係の悪化は、人事・労務管理を進めていく中で大きな弊害に繋がっていくことも事実です。

パワーハラスメントやセクシャルハラスメントが人事・労務管理上無視できないというのも、職場における人間関係の悪化につながる大きな要因になりうるためといえます。

そのため居心地の良い人事・労務環境を構築するためには、部下を持つ管理職や後輩を持つ先輩社員などに対して「職場において人間関係を良好に保つ事の重要性を理解し、人間関係に気を配ること」を研修などで伝え、合わせて部下や後輩にも同様に職場における人間関係を良好に保つために自らも努力する必要があることを伝えていく必要があります。

私が講師を務める新入社員を対象とした研修では、必ず「上司や先輩に可愛がられるような新人を目指してほしい」という話をしています。

人間関係を良好に保つための努力は、仕事を覚える努力と同様に会社に勤めていくうえで重要な要素だと考えているからです。

経験の浅い社員(メンティー)に対して、経験豊富な先輩社員などがメンターとなって、仕事だけではなく、個人的な悩みの相談などができる相手を組織的に作るメンター制度の構築をしていくのも、居心地の良い職場環境を作っていくうえで有効ではないでしょうか。

退職者を減らしていくことに重要な「居心地の良さ」は、自然発生的に作られていくものではありませんので、社内での研修やコミュニケーションが活発化するような制度・社風を作り、継続的に「居心地の良い会社」を目指していきたいところです。

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2015年06月30日

スマート社員制度から見えてくるもの

りそなホールディングスが、原則として残業をしない正社員制度として「スマート社員制度」を創設すると発表しました。

一般の正社員と比べて賞与が7割程度となるものの、基本給などの賃金水準や業務内容、昇進については、スマート社員制度を適用しても区別を設けないとのことです。

小さな子供を育てながら働く社員や介護の必要な家族を持ちながら働く社員には、時間外労働(残業)が原則ない(会社が残業を命じない)という働き方で正社員としての身分と賃金に大きな差が生まれないという制度は魅力的だと思います。

しかし見方によっては「残業することが当たり前」ということが前提の考え方から生まれた制度とも言えるため、日本の労働環境ならではの考え方でもあり、この考え方を覆すことの難しさも同時に表面化したとも見て取れます。

一部では、残業をすることが当たり前の中で生み出されたスマート制度に批判的な論調も出ていますが、私が様々な企業の労働環境に関与する中で「残業を減らす・残業を無くす」ということを「言うだけなら簡単」であり、実態として結果を出す難しさを重々理解しています。

そのような中であっても、関与している会社ごとに違う残業時間を減らすための方法に知恵を絞り続けることが重要であり、「この業界なら当たり前、我が社では当たり前」といったことで諦めるのでなく、「もがき」続けていくことは必要です。

スマート社員制度も、そのような「もがき」の中から生まれてきた制度のような気がしています。

やはり大事なのは「諦めずに知恵を絞り続けていくこと」であり、長時間労働を減らすために何をすべきなのか、何ができるのかを考えて、諦めずに提案し続けていきたいと思います。

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2015年05月29日

男性と女性の関係性と人事・労務管理

弊事務所が社会保険労務士としてお客様に提供するサービスは、会社が行う人事・労務管理に関する諸手続きをお預かりし、適正に管理・業務遂行する事により会社と社員が受けるべき権利を守ることが重要であるわけですが、それに加えて感情の生き物である「ヒト」に関する様々な相談に日々対応しています。

その「ヒト」に関する諸問題に対応していると、つくづく会社と社員の関係性が、男性と女性の関係性に似ていると感じます。

男性と女性の関係性では、お互いが好意を寄せて恋人同士となる、夫婦となるということになるわけですが、あれだけ仲の良かった恋人同士や夫婦が別れたり離婚するとなった時の状態は、幸せだったときが夢だったのかと思うぐらい関係が冷え切ってしまうものです。

人事・労務管理における会社と社員の関係性も同様に、会社に入りたいと思ってエントリーし、会社もその人材が欲しいから雇用契約を結ぶわけですから、つきあいたての恋人や新婚夫婦のように相思相愛の関係だといえます。

ところが「つきあってみたら思っていたような相手ではなかった」「結婚したら人生を一緒に歩めるような人ではなかった」というようなことと同様に、お互いが一緒になって初めて見えてくる「ミスマッチ」が要因になって関係性が冷え込み、労使間のトラブルや退職勧奨や解雇といった会社側からの労働契約の解約、自己都合退職といった社員側からの雇用契約の解約などが起こってきます。

これは、恋人だった一方から別れを告げられる、夫婦だった一方から離婚を迫られるといった、男性と女性の関係性と似たような状況です。

一度冷え切ってしまった関係を修復することが難しいのは、冷え切った恋人、冷え切った夫婦関係を想像してみれば容易に想像できるわけですが、だからこそ労使が冷え切った関係にならないように人事・労務管理の現場でも、日ごろからの慎重な管理・運用が求められてきます。

しかし感情の生き物である「ヒト」は多種多様ですから、冷え切った関係となることを完全に排除することが出来ないため、避けようと努力をしてきたとしてもトラブルへと発展してしまうことが当然あります。

しかしトラブルとなった事案を紐解いていってみると、トラブルになるまでの過程に「いくつかの小さな火種」があることが見て取れます。

つまり、その小さな火種が積み重なることで「取り返しのつかない大きな火種」になってしまい、その大きな火種に発火させるきっかけ(トリガー)があった途端に発火し大火事へと発展してしまいます。

そのため、大きな火種になってしまってからでは、対策を講じようとしても話し合いをもとうとしても既に時遅く、トリガーが引かれた後の大火事の火消しも難しくなります。

逆に小さな火種の時に、対策を講じる、話し合うといったことをしておいた場合はどうなるでしょうか。

些細な夫婦喧嘩を放置してきた結果、気が付いた時には既に離婚へと発展してしまったことを想像すれば「その些細な喧嘩」(小さな火種)の時にちゃんとケンカの原因となったことに対策を講じるなり、両者が納得するまで話し合いをするなどをしておけば、離婚という最悪のシナリオは避けられたのではないでしょうか。

人事・労務管理の現場でも同様です。些細なトラブル、小さな問題、小さな不満、これらの事案を「大した問題ではない」と勝手に決めつけ放置しないことが重要なのです。

大きな火種となって発火し、大火事になってから火消しするのは容易ではありませんから、日々の人事・労務管理の現場で小さな火種を見逃さず、早め早めの対策をとっていきたいところです。

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posted by マサ at 10:43| 社労士日記

2015年04月30日

ストレスチェック制度における検討点

近年、仕事や職業生活に強い不安や悩み、ストレスを感じている人が増えてきていると言われており、そのストレスが原因で精神障害を発症し労災認定されるケースも年々増加傾向にあります。

こうした背景を踏まえて平成26年6月に公布された「労働安全衛生法の一部を改正する法律」において、心理的な負担の程度を把握するための検査(いわゆる「ストレスチェック」)とその結果に基づく面接指導の実施を会社に義務付けることを内容としたストレスチェック制度が新たに創設されました。

このストレスチェックの実施は、本年12月から常時使用する労働者が50人以上の会社において義務化(50人未満は当面努力義務)される制度ですが、簡単にいえば以下のようなものです。

1 医師等が社員のストレスの状態を質問票でチェック
2 そのストレスチェックの結果、高ストレス者の可能性のある社員を選定
3 高ストレス者と選定された社員の申出により医師による面接指導を実施
(面接指導とは、その社員の勤務状況や心理的負担状況等を医師が社員と面談により確認し、休業が必要などの意見を医師が会社に伝えるもの)
4 面接指導の結果を受け、高ストレス者に対し会社が適切な措置を実施

 上記のような流れを定期的に行うことで、高いストレスを感じながら働いている社員を早期に発見し、メンタルヘルス不調を未然に防止する事を目的としています。

ストレスチェック制度の流れ.gif

【出典元:厚生労働省発表資料 職場におけるメンタルヘルス対策の推進について(平成26年10月3日)】

このストレスチェックを行う際の調査票として、現状「職業性ストレス簡易調査票」とよばれる57項目の質問が列挙されている票が示されており、ストレスチェックを実施すること自体はそれほど難しくありませんが、ストレスチェックの実施、結果に基づく結果の集計・分析を行ったうえで職場環境の改善にどのように繋げていくのかは、実務上多くの課題がありそうです。

たとえば、社員がストレスチェックを受ける義務が設けられていないので、ストレスチェックを受けること自体を拒否する社員も出てくる可能性もあります。

さらに、ストレスチェックの結果は社員に直接通知されるため、会社がその結果を知るためには、会社に結果を通知する事に社員個人が同意している必要があるため、ストレスチェックを受けた社員全員の結果を会社が把握できない可能性があります。

中には、ストレスチェックの結果により医師等が高ストレス者と評価し面接指導を行うよう社員に勧奨したが、会社に高ストレスを感じている状況であることを知られたくないとの思いから、面接指導を受けたいとの申出を会社に言わないことも想定されます。

今回のストレスチェック制度では、面接指導の申出を行ったことによる解雇・降給等の不利益な取り扱いを禁止していますが「今後の人事評価や昇進に影響が出るのでは・・・」と心配するあまり、高ストレス者でありながら、そのことを会社に伝えないケースが十分あり得るためです。

今後ストレスチェック制度が義務となっていく以上、会社としては制度を有効に活用したいところですので、上記のような課題をどのようにクリアしていくかについて検討が必要になってきます。

なお、毎年行われている定期健康診断の結果も常時50人以上の社員を使用する会社には、定期健康診断結果報告書を労働基準監督署への届出が必要ですが、今回のストレスチェック制度でも、ストレスチェックを実施した旨の報告を労働基準監督署へ報告する仕組みができる予定です。

ストレスチェックを実施する時期は、定期健康診断実施時とあわせて行うことが想定されますので、会社の定期健康診断の実施状況等を確認し、ストレスチェックの実施に向けて準備や検討を進めていきたいところです。

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posted by マサ at 17:05| 社労士日記

2015年03月31日

未払い残業代のツケを支払う者

国会議員が、かつての秘書から700万円にも上る未払い残業代請求を受け「払わない」と発言し大きな物議を醸しだしていますが、過度な長時間労働に対するリスクや未払い残業代請求に関するリスクは、今後も広がり続けていくことは間違いありません。

労働時間管理・賃金管理を適正に行わないことで、多額な簿外債務(未払い残業代などは、帳簿に記載されていない債務という考え方)を長年にわたり放置していくことは、大きなリスクへとつながっていきます。

労働時間管理制度の構築や賃金管理制度の変更により、ある程度の残業時間や残業代をコントロールすることはできますが、実際に発生した残業を無くすことができるわけではありません。

そのため自社にあった労働時間管理と賃金管理制度の構築を進めていくと同時に、残業が常態的に行われるような人事・労務管理環境を変えていくことが必要になります。

それには「意識の改革」が最も重要だと考えています。

たとえばノー残業デーを設定し適正に運用することや「長時間労働=高評価」といった誤った人事評価制度の改革などの「物理的な改革」を行うことも重要ですが、人事・労務管理は感情の生き物であるヒトが行うことですので「長時間労働(残業)は良いこと」とする意識を変えていく改革が避けて通れません。

ある調査では「労働時間が伸びている(残業が増えている)社員の役職昇進率が上がる」というデータがでています。

優秀な社員に仕事が集中した結果として、その優秀な社員の残業が増えているというケースもありますが、大多数のケースで「長時間会社に残って仕事をしている=頑張っている」という感覚を捨てきれない人がまだまだ多くいることの表れです。

内閣府が発表しているワーク・ライフ・バランスに関する意識調査において「残業している人に対してどのようなイメージを持っていますか」という設問では、1日の労働時間が10時間未満の社員に対して「頑張っている人」と回答した割合が38%であるのに対し、12時間以上の社員に対しては53%が頑張っている人と回答していて、労働時間が長くなるほど割合が高くなっています。

さらに同じ設問で「責任感が強い」と回答した割合をみると、1日の労働時間が10時間未満の社員に対しては30%ですが、12時間以上の社員に対して責任感が強いと回答した割合は39%となっており、こちらも労働時間が長くなるほど責任感が強いと感じている人が多いことがデータでも明らかにされています。

このような意識のままでは、残業を減らし質の高い仕事で利益を生み出すという感覚が生み出されることは難しいでしょう。

慢性的な長時間労働は、会社にとっても大きなリスクを負っていきます。過度な長時間労働が続いたことにより脳や心臓疾患・精神疾患などの症状が出た場合において、その症状が労働災害と認定されれば、会社が安全配慮義務違反による損害賠償請求をされるリスクも高まります。

さらに退職後に未払い残業代の請求を行った元社員に対して残業代を支払うこととなった場合に、そのツケを払うのは「会社と会社に残っている社員達」であることを忘れてはなりません。

会社が次々とお金が溢れてくる打ち出の小槌を持っているわけではありませんから、退職した元社員に支払う過去の未払い残業代の出所は、ボーナスや昇給のために予算化していた人件費の中から工面せざるを得ないというケースも当然想定されるからです。

部下の労働時間をコントロールできないことは、長時間労働をする社員を高く評価していた上司自らのボーナスなどの額にも影響を与える可能性のある話なのだと理解すべきです。

そのためには「短時間で質の高い仕事をすることを評価する」「部下の残業時間を減らす取り組みを行った上司を評価する」といった人事評価制度の改革や「担当がいなくても他の社員が仕事を代替できる体制つくり」といった物理的な改革を進めるのと同時に、労働時間が長くなればなるほど「頑張っている・責任感が強い」といった労働した時間だけを見て評価するような誤ったイメージを変える「意識の改革」が避けて通れません。

残業をすることが当たり前となっている人事・労務管理環境を変えて、仕事をする時間の長さではなく仕事の質を高めるための労働時間管理の方向性は、リスクを減らすだけではなく中長期的に会社に大きな利益をもたらします。そのために経営トップの号令の基、労働時間管理に対する「物理的な改革」と「意識の改革」を進めていくべきだといえます。

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2015年02月27日

グローバル展開する企業において重要な社会保障協定

港区という土地柄もあると思いますが、弊事務所も外国人の人事・労務管理案件が年々増えてきています。

外国人の人事・労務管理においては、労働法関係だけではなく入管法などの知識も必要となってくるため多角的な視点を求められますが、今回のブログでは、その多角的な視点の一つである社会保障協定について簡単にふれてみようと思います。

グローバルな事業展開を行っている企業では、本社の社員を海外にある支店や現地法人企業等に派遣することは珍しいことではありません。

このような国をまたいで働くときに問題となる一つが社会保障制度(原則として年金関係、相手国によっては健康保険、雇用保険、労災も含まれる)の2重加入の問題です。

たとえば日本人Aさんが日本の会社との雇用契約がある状態で、その会社の海外支店に派遣された場合、原則日本の年金制度(厚生年金)に加入したまま海外にある支店に勤めることになります。

ところが、その派遣された国の年金制度にも加入が義務付けられることとなり、日本の年金と派遣された国の年金の両方に加入して保険料の支払いが必要となります。

そのため一部の国との間で「社会保障協定」と呼ばれる特別な協定が結ばれており、一定のルールに基づいて「片方の国の年金制度のみ加入すればよい」という取り扱いが行われています。

この一定のルールとは、簡単にいうと「5年を超えて働く方の国の年金制度に加入する」ということです。

たとえば日本人Aさんが日本の本社から米国にある支店に3年派遣される予定であれば、一定の手続きを行うことで、日本の厚生年金に加入し続け、米国の年金制度(ソーシャル・セキュリティー)の適用を免除されることになります。

逆に米国人Bさんが8年の予定で米国本社から日本法人に派遣された場合、一定の手続きを行うことで、米国の年金制度の適用が免除され、日本の厚生年金制度に加入することになります。

なお、入りたい方の年金制度に入るのではなく、原則として派遣期間の予定が5年以内か5年を超えるかによって加入する国の年金制度が決まってくることに注意が必要です。

また、この2重加入防止のための取扱いを受けるためには「適用証明書」(年金に加入していることを証明し、社会保障協定の取扱いに則って免除を認める文書)が必要となるので、日本の厚生年金に加入し続けるケースでは、日本年金機構に対して適用証明書の交付申請を行うことになります。

また、この社会保障協定には2重加入の防止だけではなく年金加入期間を通算する協定(イギリス・韓国は除く)も結ばれています。

簡単にいえば「日本と相手国で得た年金期間を通算することで、両方の年金を貰えるようにする」ということです。

ざっくりとした例ですが、8年間日本の厚生年金に加入した米国人Bさんは、現行25年の受給要件を求められている日本の老齢年金を貰うための期間が足りません。

しかし社会保障協定による年金期間の通算により、米国年金制度の期間が17年間あれば、両国の年金期間を通算して25年となるため、実際に支払った8年分の日本の老齢年金を将来受け取ることができるようになるわけです。

一方の日本人Aさん(米国年金3年加入)の場合も同様に、米国老齢年金を受給できる要件である10年(40クレジット)に足りませんが、日本の年金加入期間が7年分あれば通算して10年となり、3年分の米国年金を受給できることになります。

現在日本と社会保障協定の署名が済んでいる国は18か国(協定発効済み国:ドイツ・イギリス・韓国・アメリカ・ベルギー・フランス・カナダ・オーストラリア ・オランダ・チェコ・スペイン・アイルランド・ブラジル・スイス・ハンガリー 署名済みだが未発効の国:イタリア・インド・ルクセンブルク)あります。

しかし国によって協定内容が違うため、社員を海外に派遣する・海外から外国籍社員の派遣を受け入れるといったグローバルに展開する企業には、その相手国の社会保障内容や日本との間で結ばれている社会保障協定の内容などを確認したうえで、どのような取り扱いにすべきなのかといった多角的な視点での人事・労務管理が求められることになります。

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2015年01月30日

マイナンバー法への対応

新年あけましておめでとうございます。本年も齋藤正憲社会保険労務士事務所ブログをよろしくお願い致します。

さて、本年最も社会保険労務士として影響があると思われるのが「行政手続きにおける特定の個人を識別するための番号の利用に関する法律」いわゆるマイナンバー法です。

平成28年1月から順次利用が開始されるマイナンバーですが、日本に住民票を持っている人全員が対象とされるため、新生児や外国人も付番されることになります。

本年10月をめどに住民票のある市区町村からマイナンバーが通知されることになりますが、社会保険労務士事務所として人事・労務管理に関する諸手続きや給与計算事務など、マイナンバーを利用することが必要な業務を委託しているお客様社員全員のマイナンバーを取得する必要が出てきているため、情報セキュリティー体制や運用方法について細心の注意が必要になってきます。

マイナンバーをどのような場面で利用するかについては「社会保障制度・税制・災害対策」といった分野になりますが、マイナンバー利用分野別業務量では、社会保障分野が約1,5億件、税制分野が約3千万件といわれており、社会保障分野が8割を占めています。

そのため多くのマイナンバーを取り扱うこととなる社会保険労務士には、今まで以上の情報セキュリティー体制が必要となってきます。

弊事務所も特定個人情報保護委員会が発表している「特定個人情報の適正な取扱いに関するガイドライン」に従い、高度なセキュリティーレベルを備えた事務所体制を構築していくこととなります。

次に、会社が社員から取得したマイナンバーの管理についても、同様に高度なセキュリティーレベルが求められてくることになります。

社員のマイナンバーの取得方法、マイナンバーを閲覧できる社員等の限定、マイナンバーの管理場所や方法の検討、マイナンバーを扱う(閲覧できる)社員等へのマイナンバー法の概要や運用上の注意点といったことへの研修を実施するなどが必要になってきます。

このマイナンバーを扱う上で最初に重要となるのが、社員全員のマイナンバーをどのように取得していくかということです。

他人のマイナンバーを使用する事により「成りすまし」が起こる可能性があるため、マイナンバー法では、会社がマイナンバーを取得する際に本当に本人のマイナンバーであるかを厳密に確認するよう求めています。

具体的には、「個人番号カードの提供を受ける」方法が一つあります。
(個人番号カードとは、希望者のみが持つ顔写真入りのカードであり、本年10月に通知される「通知カード」とは別物なので注意が必要)

上記の個人番号カードを持っていない場合は「通知カード + 運転免許証やパスポートといった顔写真付きの証明書」のダブルチェックにより本人確認をしていくことになります。

ただしマイナンバーの取得は「個人番号関係事務又は個人番号利用事務を処理するために必要がある場合に限って提供を求めることができる」とされているので、マイナンバーを利用する事務が発生している、もしくは発生することが確実な場合に限って提供を求めていくことになります。

さらに、それらの事務を処理する必要が無くなった場合(社員の退職など)は、法律で定められている書類等の保存期間(労働者名簿:退職後3年など)を過ぎたのち速やかにマイナンバーが記載されている書類を破棄又は削除しなければならないとされており、不必要にマイナンバーが記載された書類等を保管(保持)することも禁止されることになります。

なおガイドラインにおいては、従業員数100人以下の会社を中小規模事業主と定義し、マイナンバーの対応について一定の特例を設けることで実務への影響に対して配慮が図られています。

通常、従業員数300人以下の会社を中小企業と定義することが多いのですが、マイナンバーの対応については100人を超える会社は大企業と同様の対応が求められているため、早急にマイナンバーの運用方法等の検討が必要となります。

業務上知り得たマイナンバーを不正な利益を得るために第三者に提供・盗用するような行為には、罰則(懲役・罰金)が適用されることになりますので、マイナンバーの管理・運用・取り扱いには、慎重かつ万全の態勢で臨みたいところです。

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2014年12月26日

ニュースレターを毎月配信する意義とは

早いもので平成26年も残すところ僅かとなりましたが、本日が今年最終出勤日という方も多いのではないでしょうか。

弊事務所も事務所としては、本日を最終営業日とし、来年は1月5日(月)から通常営業開始とさせていただきます。

さて、事業を営む人も会社員として勤める人も、毎年大なり小なり目標を立てているかと思いますが、この1年間に目標としてきたことを、いくつ達成できたでしょうか。

私にとっては、人事・労務ニュースレターを社会保険労務士事務所の開業以来、毎月1回メールにて配信することを目標の1つとしてきましたが、7年目となる今年も欠かすことなく配信できたことに安堵しています。

人事・労務ニュースを毎月欠かさず配信する事は、非常に小さい目標といえますが毎年確実に達成していくことに意味があると考えています。

「今月は忙しいから書く暇が無いな。1月ぐらい書かなくても良いか」と自らに甘えることは簡単ですが、小さい目標すらも達成できなければ、当然大きな目標も達成できませんので、目標の大小に限らず一度立てた目標は死に物狂いで達成する努力をしていきたいところです。

また、毎月必ず配信するという目標だけではなく、どのようなテーマをニュースレターの紙面を使ってお伝えしていきたいのかということも、この7年間で大きく変化してきました。

社会保険労務士事務所を開業した当初は、人事・労務に関する法律の改正情報や一般的な人事・労務管理に関する情報をお伝えする情報提供をメインの内容としてきました。

私も現在弁護士や税理士といった士業ビジネスを展開する方々を中心に毎月ニュースレターを頂いていますが、そのニュースレターのほとんどが情報提供をメインとしている内容です。

それらのニュースレターによって、専門としている分野以外の情報を得ることができるのですが、私がニュースレターで知ったその情報を使って何かできるかというと、なかなか難しいものです。

つまり情報を知ったという事だけでは意味がなく、その情報を生かして何ができるのかといったところまで踏み込んだ形で理解しない限り、せっかく頂いた情報提供を生かすことは難しいといえます。

そのため弊事務所の人事・労務ニュースレターは、情報を提供するレターという性質のものから、私が社会保険労務士という仕事を通して人事・労務管理の現場で感じた「思い」といったものをお伝えするレターへと変化してきました。

当然社会保険労務士が関与する人事・労務管理の世界は、会社の営業秘密だけではなく個人情報も多く含まれるため、ニュースレターの紙面でお伝えできることには限界があります。

しかし、私個人が人事・労務管理の現場で感じた「思い」とは、ヒトが会社という空間で織りなす人間模様であり、その「思い」の蓄積(経験)が私の社会保険労務士としての成長へつながることだと実感しています。

だからこそ、人事・労務管理の現場で感じた「思い」をニュースレターの紙面で表現することによって、現場で得た経験や経験により得られた知識により育ってきた社会保険労務士としての私のスタンスや考え方をお伝えしたいと思っています。

「情報提供から読み物へ」

毎月どのような人事・労務管理の現場で感じた「思い」をニュースレターに書くのか悩みますが、情報提供レターではない読み物レターとして来年もご一読いただきましたら幸いです。

皆様、良いお年をお過ごしください!

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