2014年11月28日

人事・労務管理に関する経営判断の選択肢を広げるために

私が人事・労務管理によるアドバイスをお客様に行う中で、特に難しさを感じるのが労働時間管理の変更や賃金構成の変更、退職金制度の変更など、全ての社員に影響のある制度を変更するための提案を行う時です。

その理由の一つが「変更内容の捉え方や受ける影響が全社員ひとりひとり違う」という部分です。

たとえば、勤続30年の55歳幹部社員Aさんがいたとします。ある日会社から「退職金制度を変更します」という説明があり、今まで期待していた額の退職金を確保できない可能性が出てきました。

30年勤めてきたAさんにとって、このタイミングでの退職金制度の変更は、到底納得できるものではありません。

一方、Aさんの横で同じ説明を受けてきた勤続1年目25歳のBさんは「退職金制度が変わるのか」程度の認識しかありませんでした。

両者に同じ内容の説明をしているわけですが、それぞれが置かれている立場によって、変更内容の捉え方や影響は大きく変わってきます。

続けて新しい労働時間管理制度の導入により、今まで割増賃金(残業代)の対象となっていた時間外労働(残業)が残業とはならないケースの制度変更だったとします。

入社1年目のBさんにとって残業代は生活賃金の一つとなっており、残業代の減少を伴う労働時間管理制度の変更には、到底納得できるものではありません。

ところが同様の説明を聞いていた幹部社員Aさんは、元々管理・監督の地位にある者として時間外労働の割増賃金の対象とはなっておらず、部下の労働時間管理方法の変更といった程度の認識のみであり「自分にはそれほど影響のない変更」と感じていました。

このAさん・Bさんに共通する事は、結局のところ物事の判断基準が「自分にとって得なのか損なのか」という部分だということです。

感情の生き物であるヒトである以上、社員個々人が「会社」にとって良いのか悪いのかといったことではなく、あくまで「自分」にとって良いのか悪いのかという損得勘定で物事を見ていることは、ある意味当然と言えますし、そのことを否定するつもりもありません。

しかし、感情の生き物であるヒトが集う会社組織の中で、置かれている立場の違う社員の「全ての損得勘定を配慮」することは事実上不可能だと言わざるを得ません。

そのため、経営者側が会社(法人)にとって得なのか損なのかといった基準の基に経営判断を下すことは合理的だと言えます。

そのような経営判断を下す必要に迫られたときに、選択肢が一つしかない(法律上の問題)といったケースもありますが、多くの場合で「複数の選択肢」が存在しています。

私が人事・労務管理によるアドバイスを行う時に、私が考える方法論のみで「このようにすべき」というのは簡単ですが、経営判断を下すうえでの選択肢を自ら狭めてしまうのは、アドバイザリーとしては問題があります。

顧問やコンサルタントと呼ばれる仕事は、可能な限り「経営判断をする上での選択肢を広げる仕事」と考えています。

経営判断としてAプランでいくと既に決めている時には、他の意見を聞く意味はありません。

しかし、Aプランでいきたいと思っているが「実は他にもっと良い経営判断を導ける方向性があるのではないか」といった「迷い」がある時こそ、その現場をよく知る専門家に意見を聞いてみるのも一つの手です。

その際に、AプランだけではないBプラン・Cプランといった幾つかの選択肢を示されたが、選択肢が広がった後に下した経営判断が元々考えていたAプランであったのであれば、その判断に迷いは無くなるはずです。

人事・労務管理に関する経営判断は、感情の生き物であるヒトが相手となる判断ですので「あちらを立てれば、こちらが立たず」といったことも当然起こりうる問題です。

その難しい判断を下すうえでの迷いを無くすために、可能な限り選択肢を広げる提案を提供していきたいと思います。

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posted by マサ at 18:37| 社労士日記

2014年10月31日

コミュニケーション能力向上のためのソーシャルスタイル理論

感情の生き物である「ヒト」が多く集まる人事・労務管理の現場では、「相性」といった数値化できないような感情的要因により、生産性が低下したり、トラブルの原因になるようなケースがあります。

「相性?それを言ってしまったら身も蓋もない」といった声が聞こえてきそうですが、意識・無意識関係なしに「相性の良し悪し」が会社との関係・上司との関係・同僚との関係・部下との関係・取引先との関係などに影響を及ぼしています。

「何故だか理由は分からないけど、○○さんとは馬が合わない」といった経験は、職業人生の中で誰もが経験したことがあるのではないでしょうか。

本来、仕事においては感情的要因を持ち込む余地はないはずですが、ヒトがヒトであり続ける以上、「好き嫌い」や「相性の良し悪し」といった感情的要因がなくなることはありません。

しかし、退職理由の統計を見てみると「上司とあわなかった」「うまく社内コミュニケーションがとれない」等、賃金といった労働条件よりも人間関係の不満により退職するケースが多くあるため、「相性が悪いからしょうがない」と諦めてしまうほど単純な問題でないことは確かです。

そこで、部下を持つ管理職社員や取引先とのやり取りの多い営業社員には、ヒトが習慣的にとる行動のタイプを4つの分類に表した「ソーシャルスタイル理論」が参考になると思います。

アメリカの心理学者が提唱したソーシャルスタイル理論では、ヒトの行動タイプとして以下の4タイプをあげています。

感覚型「エクスプレッシブ(理屈より直感を重視するタイプ)」
行動型「ドライバー(効率といった合理性を重視するタイプ)」
友好型「エミアブル(人間関係を重視するタイプ)」
分析型「アナリティカル(理屈や分析を重視するタイプ)」

ここで示した内容だけでは、かなりざっくりとした表現となってしまいますが、自分がどのタイプに分類されるかイメージできますでしょうか。

ちなみに、私自身を自己分析するところでは「エクスプレッシブ」に分類されると思います。

このエクスプレッシブタイプと真逆関係にあると言われているのが、アナリティカルタイプと言われています。

理屈よりも直感を重視するタイプが分析をもとに慎重に行動するタイプと接して「やりにくい・苦手」といった感情を抱くことは不思議な事ではありません。

逆に、アナリティカルタイプの人から見れば、分析結果よりも感覚的考え方を重視するエクスプレッシブタイプの人の行動は理解し難いこともあるでしょう。

ドライバータイプとエミアブルタイプも同じような関係性にあります。

人間関係を重視するタイプの人から見たら、効率を最も重視するタイプの人の行動パターンは受け入れにくいと感じることがあるはずです。

つまり、日々の仕事の中で「苦手だ、馬が合わない、相性が悪い」と思う相手がいるのであれば、ソーシャルスタイル理論でいうところのタイプが真逆関係にある可能性があるわけです。

しかし、真逆だからどうにもならないという事ではありません。

ソーシャルスタイル理論の4つのタイプを深く知ることが出来れば、自分が相手にどのように映っているのかを知ることができるだけではなく、相手の行動タイプの癖を知ることができるわけですから、どのように接するのが一番良いかを理論的に考えることができます。

これは、上司から見た部下、部下から見た上司、自分と取引先の関係者といったビジネスシーンだけではなく、親子関係、夫婦関係、友人関係など幅広く活用できる「自分のこと、相手のことをより良く知るためのツール」といえます。

社員のコミュニケーション能力の向上は、業務の生産性を大きく上げていきますので、社内研修の中で社員全員が対象のソーシャルスタイル理論の研修を実施してみてはいかがでしょうか。

ソーシャルスタイル理論の考え方やケーススタディを学び、ロールプレイを実施する事で、実践的なコミュニケーション能力の向上が図れるはずです。


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posted by マサ at 15:42| 社労士日記

2014年09月30日

人事評価制度における落とし穴

「あの上司に私を評価する資格があるとは思わない」「評価のやり方が納得できない」「納得のいかない評価をされて賃金に影響する事が理解できない」など、人事評価制度を導入した際によく聞こえてくる話です。

感情の生き物である「ヒト」が「ヒト」を評価するわけですから、100人いれば100通りの意見や評価が出てきてしまうこともあり、このような意見や不満が出てくることは不思議な事ではありません。

そのため各会社では、評価の基準を公表して透明性を高めたり、考課者(評価をする側の社員)複数によって一人を評価し、複数の目でなされた評価によって正当性を高めようとしたり、考課者の評価する能力にバラツキや誤差が生まれないように、考課者訓練(研修)を頻繁に開催するなどを行っています。

しかし「わが社の人事評価制度に100%満足しています!自分への評価結果にも大満足です!」といった声が聞こえてくることはありません。

これは、生活するうえで重要となる「賃金額」の決定要素(昇給額や賞与額)として人事評価制度で下された評価が活用されることが大多数であり、感情の生き物である「ヒト」が下した評価が自身の直接の生活に影響してしまうことへの根強い警戒感があるからといえます。

ヒトとは、往々にして自分に甘く他人に厳しい所があります。

人事評価制度で行われる「自己評価」(評価される側の社員が、自分で自分を評価する)の結果を見れば一目瞭然であり、自分で自分を評価した結果「自分に低評価」をつける人はいません。

たとえ自ら足りないところがあると自覚していたとしても、自ら低評価をつけるということによって、当然考課者の評価も低評価になるわけですから、賃金に影響のでる評価を少しでも上げたいと思えば、自ら低評価をつけるメリットはありません。

さらに、部下を管理する上司に求められるマネジメント能力と、現場で業務を遂行する仕事力とは別物であることを理解せずに「俺より仕事が出来ない上司に評価なんてされたくない。部下も上司を評価できるようにするべきだ」といった意見まで出てくる始末です。

逆に評価をする側である考課者の評価結果を見てみても、部下を評価する事に恐れ「無難な評価」(大きな差をつけない、マイナス評価を避けて中間評価のみ下すなど)しか下せない者や、明らかに「好き嫌いといった感情」が排除しきれていない評価など、考課者が行う評価としては問題のある評価結果も見受けられます。

このように曖昧さを完全に排除する事が難しい人事評価制度における評価が、日々の生活に直結する賃金に影響を及ぼすことへ警戒感を持つことには理解できます。

しかし、会社に貢献している社員に対して賃金的にもポジション的にも優遇していくために「なんとなくではなく、明確な基準によって決めていきたい。公平に賃金額等を決定していることを社員に示していきたい」と考えることは当然であり、それらの判断基準として人事評価制度を構築・運用していくことには意味があると考えています。

ただし、人事評価制度によって下された評価への信頼性が無ければ、逆に社員のモチベーションを下げてしまう結果になること、感情の生き物である「ヒト」が「ヒト」を評価することの難しさを十分理解しておかなければなりません。

つまり、人事評価制度によって下された評価を「賃金額決定の要素にどの程度使用するのか」(評価と賃金額決定のウエイト)については、慎重に検討すべき問題だといえます。

人事評価制度で下された評価から見えてくるのは、「仕事のできるAさん、仕事のできないBさん」といった単純な結果でしょうか。

「仕事の結果は出しているAさんだが、自己中心的で後輩への指導などは出来ていない」「仕事の結果はあまり出せていないBさんだが、気配り上手で職場のムードメーカとなっている」

人事評価制度で見えてくるのは、仕事が出来る・出来ないといったことだけではなく「その社員に足りない部分」が明確になることでもあります。

「人事評価制度=会社に貢献している社員へ多くの賃金を分配するための手段」という考え方だけで制度設計・運用することで、その人事評価制度がうまく機能するでしょうか。

感情の生き物である「ヒト」が織りなす人事・労務管理の世界における人事評価制度の導入にあたっては、賃金配分の部分と人材育成の部分をバランスよく設計すべきだと思います。

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posted by マサ at 19:08| 社労士日記

2014年09月01日

人事・労務管理における、置かれた立場による物事の見方の違い

感情の生き物である「ヒト」が集う会社における人事・労務管理の現場では、「置かれている立場によって、物事の見方が360度変わってしまう」という事がよくあります。

たとえば、ある会社で社員の過半数を代表する「社員代表」として会社と労使協定等の交渉にあたっていたAさんは、「○○(社員にとって利益になること)を採用してほしい」と会社に対して要望を出していました。

今までの交渉の席でも会社との考え方の違いにより対立する事も多くあり、今回の要望も会社側からは「会社にとってメリットが無い」ことを理由に却下されてしまいました。Aさんは「社員の要望を何一つ聞いてくれない会社だ」などと話すなど、会社に対して不満を募らせていました。

その後Aさんは会社を退職し、自らのアイディアを形にした会社を起業して代表取締役に就任します。

事業も順調に成長し、何人かの社員を抱えるまでになった時にA社長の会社の社員代表であるBさんが「○○(社員にとって利益になること)を採用してほしい」と会社に対して要望を出していました。

その要望は、A社長が起業する前に勤めていた会社で自らが出した要望と同じだったのです。

A社長が社員としての立場だった時に必要だと思って出していた要望ですから、当然A社長は社員代表Bさんの要望を受け入れるものと思われました。

しかしA社長は、社員代表Bさんに言いました。

「会社にとってメリットが無いから採用できない」と。

Aさんのとった行動をどのように感じるでしょうか。

「結局自分が会社を経営する立場になったら社員のことなど考えなくなった」と批判的に見る人もいるでしょう。

「社員代表の時は労働者としての目線、会社の代表者となったときは経営者としての目線で物事を見るのだから当然」と肯定的に見る人もいるでしょう。

人事・労務管理の現場では、Aさんのように「置かれている立場によって、物事の見方が360度変わる」ということは珍しいことではありません。

よく「○○さんは部長になって変わってしまった」という話を耳にすることがあると思います。

部下からすれば「今まで我々の気持ちをよく理解してくれていたのに・・・。」と思うのかもしれませんが、ある程度のポジションにつけば広い視野(経営的感覚)で物事を捉えて部下を監督・指導しなければならない立場となったわけですから、上司の指揮命令下に完全におかれていた時とは物事の見方が変わるのは当然です。

ところが稀に広い視野で物事もとらえて部下を監督・指導しなければならない立場となっているのに関わらず、いつまでも物事の見方を変えられていない管理者がいます。

本人からしてみれば「部下の気持ちもわかる良い上司」とでも思っているのかもしれませんが、それだけでは組織の管理者として不十分であることは明らかです。

人事・労務管理の現場では、置かれている立場によって物事の見方を変えていかなければならない部分が多くあるわけですから、多くの部下を監督・指導する立場である管理者としての物事の見方、対応方法、立ち振る舞いを理解できないのであれば、管理者としての仕事を任せていくことはできません。

多くの部下を監督・指導する能力(マネジメント能力)と、仕事を遂行する能力(仕事力)とでは、求められる能力が違います。

会社の人材戦略の中で、多くの部下を監督・指導する管理者に誰を任命するのかは、その後の会社の業務生産性に大きく影響する重要な部分です。

仕事のできる人を管理者にすれば良いというほど単純なものではありませんから、置かれている立場にたった物事の見方ができ、かつ、部下を監督・指導できるマネジメント能力の高い人材(当然ながら社内で管理者となりうる社員を育てていく必要はある)を見極めて、管理者として任命するよう注意したいところです。

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posted by マサ at 10:27| 社労士日記

2014年07月31日

休職制度の重要性

近年、人事・労務管理の現場では、「病気や怪我によって通常通りに働くことが出来なくなった社員がいる」「働くにあたって著しい制限(短時間での勤務しかできないなど)が必要な社員がいる」といったケースが増えてきており、弊事務所にも相談が年々増えてきています。

これらの相談への対応は、患っている病気は何か、業務上の病気なのか業務外の病気なのか、健康な時に従事していた仕事はどのような業務なのか、社内でどの程度のポジションにいた社員なのか、勤続年数はどの程度なのか、会社の規模はどの程度なのか、会社の就業規則に休職に関する制度が規定されているのか、規定されている休職制度の内容はどのようなものなのか、といった多くの要素の中から問題解決の糸口を探っていかなければいけない難しさがあります。

これらの要素が一つでも変われば、解決策が変わってくるだけではなく、限定的な解決策しか行えないなどのケースが出てくるからです。

病気や怪我によって健康な時と同様の仕事が出来なくなった場合に病気等を罹患した社員は、雇用維持の不安、賃金減少の不安など多くの不安を抱えることになります。

一方会社の方も病気や怪我によって働くことに制限がかかる社員を「即解雇」という訳にもいかないため、全体の業務に与える影響や代替要因の確保、働けなくなった原因となった病気や怪我の今後の治癒展望などを総合判断していくことになり、難しい判断を迫られます。

そのため多くの会社では、健康な時と同様の仕事が出来るまで回復することを期待し、病気や怪我の治療に専念するために一定期間会社を休むことを認める「休職」を発令する運用が一般的といえます。

この休職制度は、法律に規定されている制度ではないため、休職制度を会社として設けるか設けないか自由ですし、設ける場合であっても、どの程度の期間会社を休むことを認めるのか休職期間中の賃金の取り扱いをどのようにするのかといった実務的な内容も会社の就業規則の定めによるところです。

しかし、近年の人事・労務管理の現場を見る限りでは、休職制度を設けないという選択肢は無いと言い切ってもよいでしょう。

「病気になって通常通り働けなくなったらクビ」という人事・労務管理は問題がありますし、かといって働けなくなった社員の雇用を維持し続けることが難しい局面も当然出てきます。

だからこそ会社としては、雇用を維持しながら健康な時と同様の仕事が出来るまで回復することを期待し、治療に専念できる時間的猶予「休職期間」を一定期間設けることで、会社としての責任を果たそうとしているといえます。

しかし、休職期間も無限にあるわけではありません。

休職期間をどの程度設けるかは、会社の考え方によるところですが、就業規則に規定している休職できる期間の上限は、数か月から数年までと会社によりバラバラなのが実態です。

さらに、休職の対象となった社員の勤続年数の違いによって休職期間に差がついているケースも多くあります。

この休職期間をどの程度設けるかについては、その休職として認められた期間が満了したときに治癒(一般的には、健康な時と同様に仕事が出来るまで回復している状態)していないのであれば、休職期間満了をもって「自然退職」とする規定が一般的なため、非常に重要な部分です。

これは、会社が雇用を維持できる上限と定めた期間を満了した場合は、一方的な解雇ではなく、自然と退職となる規定を就業規則において雇用ルールとして定めている(稀に解雇とする規定を設けている就業規則もある)わけですから、その雇用を維持できる上限をどの程度の期間にわたり設けるかは、会社として慎重に検討していくべきことです。

もちろん会社として判断する際には、結局は感情の生き物である「ヒト」が「ヒト」について総合的に判断していくことですので、規定として定めている、ルールとして確立しているといった一辺倒の考え方では感情の生き物である「ヒト」の問題を解決に導くことは難しいでしょう。

しかし、感情の生き物である「ヒト」の問題を解決するにあたって、「その判断材料となった基本の根拠とは何か」といった部分が無ければ、判断に大きな「ブレ」が出てきてしまいます。

その観点からも、就業規則において休職の規定をどのように設けていくのかについては、今後ますます重要度を増してくるといえます。

会社にとっても社員にとっても影響の大きい休職制度。慎重に対応していきたいところです。

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posted by マサ at 20:31| 社労士日記

2014年06月30日

人事・労務管理の今を表す統計


先月5月に厚生労働省が発表した「平成25年度個別労働紛争解決制度施行状況」は、会社と個人(社員・退職者など)の間で起きている雇用・労働関係の争いに関する資料であり、人事・労務管理の現場の「今」を表すものとして見ることができます。

この統計では、会社と個人との間で争いが起こっていることにより、当事者の一方が行政の相談窓口に相談した件数と内容が記載されていますが、その総件数の内19.7%が「いじめ・嫌がらせ」に関する相談であるとの結果が出ています。

この「いじめ・嫌がらせ」に関する相談件数の前年度との比較を見てみても14.6%も増加しており、右肩上がりで増えていっていることが見て取れます。

労働者を解雇することのハードルが高いとのイメージが、人事・労務管理の現場に蔓延しているため、会社を自主的に辞めてもらうように「簡易な仕事しか与えない」「理不尽な業務命令や人事異動」といったケースが行われることもあり、人事・労務トラブルとして大きな比重を占めてきています。

一方、解雇に関する行政への相談は、総相談件数の内14.6%という結果です。

この数字を見る限りでは、解雇相談も多くの比重を占めているように見えますが、平成22年度からは一転して相談件数が減少傾向にあり、前年度比較を見ても14.7%減少し、9年ぶりに相談件数5万件をきったとのことです。

解雇に関する相談が減って、いじめと嫌がらせに関する相談が増えるという状況が、人事・労務管理の現場の「今」を表しているように思います。

また、同じように相談が増えている内容では「自己都合退職」に関する相談が、総相談件数の内11%を占めており、前年度比較でも11%増加しています。

この内容を見たときに「自己都合退職なのにトラブルになるの?」という純粋な疑問が出てきますが、この自己都合退職に関する相談の内容が「会社を辞めたいのに、引き止められて辞めさせてもらえない」という内容が増えてきているとのことです。

まさに、人手不足が深刻となっている業界・業種から聞こえてくる「募集しても労働者が集まらない」「すぐに辞めてします」といった声を反映していて、これも人事・労務管理の現場の「今」を表しているといえます。

その他の相談内容を見てみると、総相談件数の内、労働条件の引き下げが10%、退職勧奨が8.3%、雇止めが4.3%と続いています。

これらの相談を行ったことにより、会社もしくは労働者に対して都道府県労働局長による助言・指導をしてほしいと申出た件数が約1万件ありますが、前年度に比べると3.3%減少しています。

さらに、助言や指導ではトラブルの解決に導けなかったため、第3者(行政機関・弁護士・社労士等)を入れて話し合いによるトラブルの解決を目指す「あっせん制度」の申請件数も前年度と比較して5.5%減少するという結果となっています。

この「あっせん制度」の申請内容では、解雇に関するものが26.6%で最も多かったものの、前年度比較で15.2%減少しています。

ところが「いじめ・嫌がらせ」に関する「あっせん制度」の申請は、前年度比較で13.6%増えており、会社内における「いじめ・嫌がらせ」といった行為が深刻化してきている人事・労務管理の現場の「今」を表しているといえそうです。


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2014年05月30日

情報社会における人材確保の難しさ

「人を募集してもエントリーがない」「いつも人を募集している状態だ」近年、中小企業の人事・労務管理の現場で悲鳴のように聞こえてくる言葉です。

募集に対してそれなりの応募があるが「良い人材がいない」という理由であればまだしも、募集をしてもエントリーすらないというのは非常に厳しい状況です。

某飲食チェーンでは、アルバイトの確保が出来ず店舗の一時休業に追い込まれる事態になっており、働く人がいないので店舗を開けることもできないという有様です。

働き手の減少等、いくつかの要因がありますが、最も大きな要因と考えられるのが「業界・業種・企業のイメージ」が良いイメージ、悪いイメージに関わらずインターネット等により急速に広まる現代の環境にもあると思います。

たとえば、就職活動をしている人に「介護職についてどのようなイメージを持っていますか?」と聞けば「重労働で低賃金」といった悪いイメージを持っている人が大多数です。

これは、実際に介護の現場で働いたことはないけど、「そのような話をよく聞く」「そういう情報をよく見る」といった社会的イメージが強く、介護職という業界・業種は「全てそういう職場」と思われている状況です。

一方、保育士が足りないと深刻に騒がれていますが、保育士の資格を持ちながら、保育の現場で働いていない「潜在保育士」が全国で60万人程度いると言われています。

その潜在保育士の30%程度が保育現場での勤務経験が無いと答えており、保育士業界の「賃金の低さや休暇の取りにくさ」といった社会的イメージにより、保育士の資格を取得したが保育士として仕事をすることを希望しない人が一定数存在している現実が浮き彫りになっています。

さらに、企業イメージもインターネット等により急速に広がっていきます。

ブラック企業の代表格のように騒がれている某居酒屋チェーンでは、運営している企業名がわかる名前の店舗でアルバイトを募集しても、ほとんど応募が無いが、企業名がわからない店舗名のお店で募集したアルバイトには、200人程度の応募があったそうです。

両店舗とも同じ企業が運営しているわけですが、企業名が持つ社会的イメージにより、ここまで人材募集に影響が出るのも最近の大きな特徴です。

一度ついた企業イメージを払拭するのは容易ではありません。

逆に、有名な上場企業や公務員などを希望している就職活動中の学生が多いのも、賃金的な優位さだけではなく「環境の良い職場」という社会的イメージの企業で働きたいという意識が強く表れています。

最近の若者は、小さいころより様々な情報を「手軽」に手に入れてきた世代です。

良い意味でも悪い意味でも手軽に情報を手に入れてきたことにより、インターネット等で見る・聞く情報を素直に受け止め、そこで得た社会的イメージで物事を判断していく特徴があると思います。

このことを逆に見れば、「業界・業種・企業イメージ」が良ければ人が集まることは間違いないわけですから、適正な労働時間管理や賃金管理、働きやすい環境作りに向けた取り組みなどを行っていくことは、人口減少時代の今、ますます重要になってくるといえます。

「君の代わりはいくらでもいるんだよ」というセリフが通用しない時代となってくるのは間違いないわけですから、「この会社でずっと働いていきたい」と思われるような人事・労務管理をしていくための環境作り、制度的仕組みを作り上げる努力は常にしていきたいところです。


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posted by マサ at 19:25| 社労士日記

2014年04月30日

高い解雇ハードルへの議論の必要性


映画やドラマなどで「お前などクビだ!クビ!」と叫ぶシーンがありますが、実際の人事・労務管理の現場では、頻繁に目にするようなシーンではありません。

日本企業にとって、「クビ=解雇」を通知することは、非常にハードルの高い行為という認識があります。

労働契約法において、「客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、解雇は無効」とあるように、長い期間をかけて積み上げてきた判例によって構築された解雇権濫用法理が人事・労務管理の現場に大きく影響してきているといえます。

ただし「解雇をしてはいけない」ということではありませんから、就業規則の規定や解雇に至った経緯などを総合判断して解雇せざるを得ないケースがあるのも事実です。

あまりにも「解雇はハードルが高い」というイメージが大きくなりすぎた結果、会社から解雇を通知することはしないが、本人が会社を辞めたくなるように仕向けるような行為(肩たたき)を長年行うような行為もあり、このような方法が正解だとは思えません。

会社を辞めさせるために肩たたきをするぐらいであれば、解雇したほうが良いというような安易な理論に行きつくことはありませんが、少なくとも「解雇のハードルを高くしていくこと」が問題解決することに繋がらないことは確かだと思います。

数年前のことですが、駅の構内で「会社に行きたくない・・行きたくない・・」と繰り返し独り言をいう40代と思われる背広姿の男性を見たことがあります。

この男性がどのような状況におかれているのか不明ですが、少なくとも会社に行くことだけで苦痛になっていて、かつ、事情があって会社を辞めることができない四面楚歌に追い込まれていることは想像できます。

そのような中、近年議論が活発化しているのが「解雇の金銭解決制度の導入」です。

解雇規制における金銭解決制度とは、裁判所が解雇を違法と判断した時に、労働契約の終了(退職)を前提として金銭の支払いを会社側に命ずる制度とされています。

ここでポイントとなるのが、解雇を違法と判断された場合である事と、退職を前提としている点です。

解雇を通知された労働者が解雇無効を主張して裁判に持ち込み、裁判所が解雇を違法と判断した場合、解雇された労働者の原職復帰(職場復帰)が認められることになるのですが、解雇問題で争った会社に戻って将来に向かって仕事をしていくことが事実上難しいケースが大多数であり、現状でも退職を前提とした金銭解決(和解金の支払い)が図られています。

さらに訴訟だけではなく、会社と労働者の間でおきている労働トラブルを解決するために設けられている「労働審判制度」や「あっせん」等の制度でも、退職を前提とした金銭の支払いを行うことで解決に至るケースが大多数です。

このような事情があることから、解雇の金銭解決制度の導入論があるわけですが、当然問題点も多くあります。

お金さえ払えばいつでも解雇できると考える会社も出てくる可能性もありますし、整理解雇などのように対象人数の多い解雇事案の場合、解雇を違法とされた場合のリスクは、今以上に高まると言えます。

また、解雇の金銭解決における金額が「いくらなら妥当なのか」といったことも難しい問題です。

「会社を辞めてもらう」という行為の代償が大きいのは、どのような制度が出来ても大きく変わることはないと思います。

しかし、労働契約法でいう「客観的に合理的な理由」「社会通念上相当」という非常に曖昧な表現で「解雇が正当なのか不当なのかについては、裁判所の判断次第」といったことでは、人事・労務管理の現場に混乱をもたらすだけです。

解雇のハードルを下げることは、それぞれが置かれている立場(経営者側なのか労働者側なのか)によって賛否両論あるわけですが、金銭解決制度導入論を始めとして、今後議論をしていかなければならない問題です。

人材の流動化が進む日本の人事・労務管理の世界では、避けて通れない議論となるはずです。


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posted by マサ at 18:30| 社労士日記

2014年03月28日

見えない賃金

先週、顧問先の会社を訪問した際に入り口に出迎えに来てくれた社員が「先生、私のこと覚えてくれていますか?」と話しかけてくれました。

「去年の新人社員研修に参加してくれた方ですよね」と私が答えると、「はい!覚えてくれていて嬉しいです!」と元気な声が返ってきました。

その姿から彼女が新入社員として過ごしてきた1年間が充実していたことがわかります。

例年この時期は、顧問先の会社を中心に4月入社の新入社員を対象とした研修の講師を多く勤めるわけですが、今年も「見えない賃金」の話は重要なテーマとなります。

新入社員に初めて自分が手にした「給与明細書」の金額を見て「自分が1か月働いて得た給料は、いくらでしたか?」と尋ねると、自分の銀行口座に振り込まれる「手取り金額」を答えるケースが多くあります。

自分が自由に使えるお金が「手取り金額」であることは間違いないですが、社会保険料や雇用保険料などの保険料等が引かれる前の「総支給額」にも目が行っていない状態です。

一方、先ほどの質問に「社会保険料等が引かれる前の総支給額」が1か月働いて得た給与だと答えた社員がいました。

一見、正解のようにも見えますが、この回答にも「見えない賃金」が認識されていません。

ここで言う「見えない賃金」とは、給与明細書に記載されることのない健康保険料の会社負担分、厚生年金の会社負担分、雇用保険の会社負担分、会社が全額負担する労災保険料といった会社が負担している保険料をさします。

ざっくりとした例ですが、Aさんの支払うべき各種保険料が10だとした場合、Aさんの給与から5を支払い、残りの5の保険料を会社が負担します。

ところが、Aさんが年金や健康保険、雇用保険の給付を受けるときには「10の保険料で計算された給付」を受けることになります。

つまり、年金等の保険給付を受ける際には、会社が負担した保険料分も含まれたうえで、全てAさんに対して支給されることになります。

ところが、各社員が目にする給与明細書には、「自分が負担する5の保険料」のみ記載されるため、残りの「会社が負担している5の保険料」を社員が認識することはありません。

私は、この「会社が負担している5の保険料」を「見えない賃金」という表現で新入社員に対して毎年説明しています。

毎月の給与として手元に入る金額ではありませんが、自分が負担した5の保険料と会社が負担した5の保険料を合わせた10の保険給付を受けるわけですから、「会社が負担する5の保険料」は給与と同意義だと考えるからです。

様々な規模の会社の新人社員研修で「見えない賃金」の話をした時に、それをお聞きになった経営者の方から、必ずと言ってよいほど「新人社員だけでなく社員全員に話してもらいたい話だ」という言葉が出てきます。

企業規模関係なく、新入社員、中堅、ベテラン関係なく、この「見えない賃金」を含めた総額を「自分の労働の対価」と考えられる社員がほとんどいない現状を表しています。

経営側から見れば、この「会社が負担する5の保険料」の負担は非常に重いものであり、支払うことが免れないものであるからこそ、せめて「見えない賃金」のことを知って理解してもらいたいと思うのは自然な事でしょう。

基本的な事でありながら、実は見落としがちである「見えない賃金」の話を、今年入社した新人社員に研修の場で話すことには意味があります。

自分が実際に手にする手取り金額だけではない労働の対価を見出してくれるはずです。


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posted by マサ at 18:46| 社労士日記

2014年02月28日

美容院のチラシを配る青年から見える人事・労務管理


社会保険労務士といった「人」に関係する仕事をしていると、日々の生活の中でも様々な人が気になってしまいます。

業務の中で「良い意味でも悪い意味でも」感情の生き物である人の生々しさを垣間見ているからかもしれません。

通勤途中で見かける人やオフの時に買い物に行ったお店で見かけた人、馴染みの居酒屋へ行ったときに接客してくれた人など、日々の生活の中で多くの人と交わる中で、ふと目につくことがあります。

最近特に気になったのが、通勤過程で利用している駅前で、いつも「つまらなそう」にチラシを配っている一人の青年。

一度その青年の配っているチラシを受け取ったことがあるのですが、駅の近くにある美容院の案内チラシでした。

チラシを配っている青年は、その美容院に勤める美容師の卵だと思うのですが、その青年にとって自分が勤める美容院を宣伝するためのチラシを配るという行為(仕事)は、「自分にとって意味のない、つまらない仕事」と感じているのでしょう。

残念なことに、その感情がオーラのように全身を包んでいて、青年が適当に差し出すチラシを受け取る人は、ほとんどいません。

チラシを使ってお店の宣伝をしたいと考えている美容院のオーナーが期待している効果は期待できませんし、その青年の仕事に対する態度やモチベーションの低下も問題です。

おそらく、その青年はオーナーから「駅前でチラシを配ってきて」とだけ言われて大量のチラシを渡されたのでしょう。

そのチラシを配るという「仕事の意味」を伝えることなく。

その青年も大量に渡されたチラシを見て「新人だから、こんなつまらないことをさせられている」と、自らに与えられた「仕事の意味」を考えることもなく、ただ不満を抱えただけ。

もちろん、チラシを配るという仕事が「好きでたまらない!」という人は稀ですが、嫌々仕事をさせたところで、期待された効果が生まれることはありません。

この青年を見たときに、有名な石工職人の話を思い出しました。

3人の石工職人が同じ給料で同じ仕事(石を切る仕事)をしています。そこを通りかかった旅人が、「何のために石を切っているのか?」と質問したところ、3人の石工職人がこう答えます。

一人目の石工職人は「お金をもらうためだよ」と答え、二人目の石工職人は「腕の良い石工の仕事をしているのだよ」と答え、三人目の石工職人は「何百年も人々が祈りをささげる立派な教会を建てるためだよ」と答えました。

私は、この逸話のどれも正解だと思っています。たとえ「お金のためだ」という理由であっても、それが、その人にとっての「仕事の意味」であれば、恥ずべきことではありません。

つまり、駅前でチラシを配る仕事を「お金のために、仕事としてちゃんとやろう」と考えて、お金のために一生懸命チラシを配ってくれれば、なんら問題が無いはずです。

話に聞くところでは、勤めている美容師にチラシ配りの仕事を頼んだ時には、一定額の手当をつけている美容院もあるようです。

チラシを配る美容師の名刺をチラシの中に入れておき、その名刺を持って来店してくれたお客様には、その美容師が担当できるといった仕組みを作るのも面白いかもしれません。

どのようなやり方にせよ、チラシを配るという仕事に「仕事の意味」をつけてあげれば、また違った結果や効果が生まれてくるでしょう。

いつも「つまらなそう」にチラシを配っている青年に「あなたは何故チラシを配っているのですか?」と聞いたら、どのような答えが返ってくるでしょうか。

「配って来いって言われたので・・・・」そんな答えが返ってくるような気がします。

非常にもったいないことですね。

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